ドラマ『風薫る』9週では、看病婦のフユたちとトレインドナースの対立が描かれました。
長年現場を支えてきた看病婦たちは、なぜ見習い生たちに反発したのでしょうか。
また、看病婦とは現代でいう看護助手のような存在だったのでしょうか。
実は明治時代の看病婦は、現在の看護助手とは異なる役割を担っていました。
本記事では、明治時代の看病婦の仕事内容やトレインドナースとの違いについて、ドラマ『風薫る』とあわせて解説します。
風薫る|明治時代の看病婦とは?
ドラマ『風薫る』に登場するフユたち看病婦は、明治時代の病院を支えた重要な存在でした。
看病婦とは、患者の身の回りの世話や病状の見守り、医師の補助などを行う職業です。
現代の病院にも看護助手という仕事がありますが、当時の看病婦はそれよりも幅広い役割を担っていました。
明治時代の病院では、現在のような看護学校を卒業した看護師はまだ多くありませんでした。
そのため、看病婦たちは先輩から仕事を教わりながら、実際の現場で経験を積んで技術を身につけていきます。
患者の食事や清潔の世話だけでなく、手術の補助や医師の指示を手伝うこともあり、病院には欠かせない存在でした。
一方で、仕事のやり方は個人の経験に頼る部分も多く、知識や技術にばらつきがあったのも事実です。
そこで導入されたのが、西洋式の看護教育を受けたトレインドナースでした。
『風薫る』9週で描かれた看病婦とトレインドナースの対立は、古くから現場を支えてきた看病婦と、新しい看護を学んだ人材が出会った時代の変化を表していたのです。
風薫る|看病婦は現代の看護助手だった?
ドラマ『風薫る』を見ていると、フユたち看病婦は現代の看護助手に近い存在なのではと思うかもしれません。
しかし実際には、完全に同じ役割だったわけではありません。
現代の看護助手は患者の身の回りの世話や病室の環境整備などを担当します。
一方、明治時代の看病婦は患者の世話だけでなく、医師の診療補助や手術の補助も担うことがありました。
【明治時代の看病婦の主な役割】
・患者の食事や身の回りの世話
・病室の清掃や衛生管理
・患者の容態観察
・医師の診療補助
・手術の補助
【現代の看護助手の主な役割】
・食事や入浴、排泄の補助
・ベッドメーキング
・患者の移送
・病室や備品の管理
・看護師のサポート
このように比べると、看病婦の方が業務範囲は広く、現在の看護師に近い仕事も担っていたことが分かります。
ただし、多くの看病婦は学校教育を受けておらず、現場で経験を積みながら技術を身につけていました。
つまり看病婦は、現代の看護助手そのものではなく、看護助手と看護師の中間のような存在だったのです。
風薫る|看病婦と看護師は何が違う?
ドラマ『風薫る』9週では、看病婦とトレインドナースの対立が描かれました。
両者とも患者を支える仕事でしたが、その学び方や立場には大きな違いがありました。
【看病婦】
・看護学校を卒業していない人が多い
・現場で経験を積みながら技術を習得
・病院ごとに仕事のやり方が異なる
・患者の世話や医師の補助を担当
【トレインドナース(看護師)】
・看護学校で専門教育を受ける
・衛生学や看護学を学ぶ
・統一された知識や技術を持つ
・近代的な看護を実践する
このように、看病婦は「経験」を重視し、トレインドナースは「知識」を重視していました。
『風薫る』で描かれた対立は、どちらが正しいかではなく、看護が近代化していく過程で生まれた価値観の違いだったのです。
風薫る|なぜトレインドナースが必要になったのか
明治時代にトレインドナースが必要とされた背景には、近代医療の発展と感染症の流行がありました。
『風薫る』の序盤でも描かれていたように、当時の日本ではコレラがたびたび流行し、多くの命が失われていました。
当時のコレラの実態については、こちらの記事で詳しく解説しています。
👉風、薫る|コレラとは?明治の実態は「助けたら終わり」だった
それまで病院では看病婦が患者の世話や医師の補助を担っていました。
しかし、看病婦の多くは現場で経験を積みながら仕事を覚えており、衛生学や医学の知識を体系的に学ぶ機会はほとんどありませんでした。
そのため、病院ごとに看護の質に差があり、感染症への対応にも限界があったのです。
そこで日本は西洋医学とともに看護教育を取り入れ、専門的な知識を持つトレインドナースの育成を進めます。
看護学校では衛生管理や患者観察、病気の知識などを学び、どの病院でも一定水準の看護が行えることを目指しました。
つまりトレインドナースは、看病婦に代わる存在として生まれたのではありません。
感染症対策や近代医療を支えるために、新たな知識と技術を持つ人材として必要とされたのです。
『風薫る』9週で描かれた対立は、日本の看護が大きく変わろうとしていた時代の姿を表していました。
風薫るに描かれた対立は本当なのか?
『風薫る』9週では、看病婦たちがトレインドナースに強く反発する様子が描かれました。
このような対立は本当にあったのでしょうか。
結論から言えば、明治時代には看病婦とトレインドナースの間に価値観や立場の違いがあり、戸惑いや反発が生まれることは十分に考えられます。
当時の看病婦たちは、病院で患者の世話や医師の補助を担いながら、長年の経験によって技術を身につけていました。
資格や学校教育はなくても、現場を支えてきたという誇りがあったのです。
一方で、トレインドナースは西洋式の看護教育を受けた新しい存在でした。
衛生学や患者観察、感染症対策などを学び、近代的な看護を実践することが期待されていました。
そのため、経験を重視する看病婦と知識を重視するトレインドナースの間には、考え方の違いが生まれても不思議ではありません。
ただし、ドラマのような対立がそのまま史実として記録されているわけではありません。
『風薫る』では、看病婦とトレインドナースの関係を通して、日本の看護が大きく変わろうとしていた時代を分かりやすく描いているのでしょう。
9週で描かれた葛藤は、経験中心の看護から知識と衛生を重視する近代看護へ移り変わる過程で起きた時代の変化を象徴していたのです。
まとめ
『風薫る』9週で描かれた看病婦とトレインドナースの対立は、単なる人間関係の衝突ではありませんでした。
その背景には、明治時代の医療や看護が大きく変わろうとしていた時代の流れがあります。
看病婦は現場で経験を積みながら病院を支えてきた存在であり、現代の看護助手とも看護師とも異なる役割を担っていました。
そしてコレラなどの感染症流行をきっかけに、衛生学や看護技術を学んだトレインドナースが求められるようになります。
『風薫る』で描かれた対立は、経験と知識のどちらが大切かではなく、近代看護が誕生していく過程で生まれた葛藤だったのかもしれません。
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