桐谷総理(板谷由夏)の娘・カナ(白本彩奈)の誘拐から一週間。
犯人は沈黙を続け、SNSでは総理の不倫疑惑が炎上。世論の負荷が高まる中、DICTはカナがバンコクに入国した痕跡を掴むが、その後の足取りは消えていた。
同行していた沢北卓(樋口幸平)の関与は濃厚ながら証拠はない。
そんな折、総理のスマホに犯人からメールが届き、拘束されたカナの写真が添付される。
続く電話で犯人は“過去に活動停止した団体への謝罪”を要求し、拒否する杏子に言葉を残して通話を切った。
奈美(沢口靖子)は宗教団体の残党を捜査するが成果は得られず、DICTは振り回され続ける。
一方、逃亡中の野村(北代高士)がシステムエンジニアを殺害し、バックドアを組み込んでいた国見との関係が浮上。
国見のスマホから位置情報を追うも潜伏先は空で、嘲笑うメッセージだけが残る。
追い詰められた桐谷総理のもとには、暴行を受けるカナの映像と「娘を助ける方法がある」という謎の連絡。
さらに、元公安・掛川(金田哲)の情報を受けた奈美は佐生(安田顕)に直談判し、佐生が“カナの出国を以前から把握していた”ことが明らかになる。
絶対零度|犯人の狙いは「カナ」ではなく“桐谷杏子”そのもの
絶対零度第9話で明確になったのは、犯人が狙っているのは誘拐されたカナではなく、桐谷総理本人の意思と政治判断だということです。
要求は“過去に活動停止処分を下した団体への謝罪”。身代金でも解放条件でもなく、総理の価値観を否定し、政策を撤回させる圧力でした。
さらに犯人は拘束写真や暴行映像を段階的に送信し、杏子の精神を削るように追い込んでいく。
これは確実に時間をかけて判断力を奪う心理的支配であり、単独犯の突発的犯行とは別次元です。
DICTを翻弄する通信遮断や、宗教団体という“外れ捜査ライン”を提示した点も同じ構造。
捜査の焦点をずらし、国家機関の手を空振りさせる意図が読み取れます。
犯人はカナを道具として扱いながら、世論の炎上や総理批判を増幅させ、母親としての弱点と政治家としての責任を同時に突く。
ここまで戦略的な圧迫は、個人の復讐ではなく組織的犯行を示唆しています。
絶対零度|裏切者は誰か──DICT内部の情報はどこから漏れた?
絶対零度第9話でもっとも不穏だったのは、犯人の技術力でも挑発でもなく、DICTの捜査が常に先回りされているという事実です。
GPSで野村の位置を特定しても潜伏先は空、挑発のメッセージだけが残る。
これは偶然や幸運では成立しません。“事前にDICTの行動が伝わっている”ことを前提にしなければ説明できない動きです。
さらに、バックドアを仕込んだシステムエンジニアたちは次々に殺害され、副業の仲介役である久慈幹二(池内万作)は逃亡を支援。
つまり彼は現場の実行と連絡を繋ぐ“駒”であり、その背後に操作する存在がいる。
ここで浮かぶのが、内部から情報を渡している人物の存在です。
DICTの捜査手順、警察の動き、政治的圧力──これらを同時に把握できる人間は限られます。
裏切者は「犯人側の誰か」ではなく、守るはずの組織の中で沈黙を選んだ者。
だから視聴者は恐怖ではなく“怒り”を覚えるのです。
絶対零度9話まとめ
絶対零度第9話は、犯人の標的がカナではなく桐谷杏子という“意思”そのものであることを露骨に示しました。
映像や要求は、母親としての弱さと総理としての責任を同時に突き刺すもの。
DICTは追跡のたびに翻弄され、内部の判断軸のズレ(佐生と奈美)が致命的な空白を生みました。
だからこそ、事件は“犯人 vs 捜査”ではなく、国家の冷徹と人を守る倫理の衝突として加速していく。
次回、杏子は“母である自分”と“総理である自分”のどちらを選ぶのか。犯人はその決断を見届けるために、最後の一手を切ってくるはずです。
絶対零度沢口靖子全話はこちらから
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